淡路島の食材 — なぜこの島のものは違うのか
食材の質は偶然の産物ではありません。淡路島の玉ねぎが甘く、魚が締まっているのには、土と潮という具体的な理由があります。
淡路島玉ねぎ — 甘さの理由
淡路島の玉ねぎが甘いという評価は広く知られていますが、その理由はいくつかの条件の組み合わせにあります。
土壌
島の主要な玉ねぎ産地は、水はけのよい土壌を持ちます。玉ねぎは過湿を嫌う作物で、排水性は品質に直結します。加えて島には稲作と玉ねぎを組み合わせる輪作の慣行があり、これが土の状態を保ってきました。同じ畑で同じ作物を作り続けないという原則が長く守られてきた意味は小さくありません。
気候
瀬戸内海性気候の島は、温暖で降水量が少なく、日照に恵まれます。玉ねぎは生育期間の長さが糖度に影響する作物で、島の気候はゆっくり育てるのに適します。急がずに育った玉ねぎは、辛味成分に対する糖分の比率が高くなる傾向があります。
貯蔵
島の風景に特徴的な「玉ねぎ小屋」は、収穫した玉ねぎを吊るして自然乾燥・貯蔵するための構造物です。海風が通り抜けるように作られたこの小屋で時間をかけて貯蔵することで、辛味が抜け、甘みが増していきます。つまり淡路島玉ねぎの味は、栽培だけでなく収穫後の時間の扱い方にも支えられています。
新玉ねぎと貯蔵もの
春から初夏にかけて出回る新玉ねぎは、水分が多く、辛味が弱く、生食に向きます。一方、乾燥・貯蔵を経たものは、加熱したときに甘みが強く出ます。同じ「淡路島玉ねぎ」でも別の食材と考えたほうが、扱いを間違えません。
淡路牛
淡路島は、兵庫県の但馬牛の系統を受け継ぐ和牛の産地として長い歴史を持っています。特筆すべきは、島が素牛(もとうし)、つまり子牛の生産地として重要な役割を担ってきたことです。ここで生まれ育った子牛が全国各地に出荷され、その地で肥育されてブランド牛になる、という流れが長く続いてきました。全国的に名の通ったブランド和牛の背景に、淡路島の畜産があるという事実は、島の外ではあまり知られていません。
島内で肥育され出荷される牛は「淡路牛」あるいは「淡路ビーフ」といった名称で扱われます。表示や規格は制度によって定義が分かれるため、購入や注文の際には表示を確認するのが確実です。
島の海の幸
淡路島の魚介を特徴づけるのは、島を囲む海の潮流の速さです。北の明石海峡、南の鳴門海峡はいずれも日本有数の急潮。速い潮で泳ぐ魚は運動量が多く、身が締まります。
鱧(はも)
夏の関西を代表する魚です。鱧は小骨が非常に多く、そのままでは食べられません。そこで用いられるのが骨切りという技法で、皮一枚を残して身に細かく包丁を入れ、小骨を断ち切ります。「一寸につき二十四筋」といった目安が語られるほど繊細な作業で、専門の訓練を要します。
骨切りした鱧を湯に通すと身が白く開き、花のようになる — 湯引き(落とし)です。鱧鍋、鱧しゃぶ、焼き鱧など調理法は幅がありますが、いずれも骨切りという前提技術の上に成立します。旬は夏、梅雨の水を飲んで旨くなると言われます。
しらす
イワシ類の稚魚。鮮度の劣化が非常に速い食材で、水揚げから加工までの時間がそのまま品質を決めます。港と加工場の距離が短い島の条件は、この点で決定的に有利です。釜揚げしらす、しらす干し、ちりめんと、乾燥度合いによって呼び名と用途が変わります。生しらすは鮮度の条件が特に厳しく、扱える時期と場所が限られます。
鯛(たい)
明石海峡・鳴門海峡の急潮で育つ真鯛は、身の締まりで高い評価を受けてきました。春の産卵期前のものは「桜鯛」と呼ばれ、季節の風物詩となっています。刺身、鯛めし、潮汁と用途は広く、頭や骨からも良いだしが取れる、無駄の少ない魚です。
3年とらふぐ
通常のとらふぐ養殖はおよそ2年で出荷されますが、淡路島周辺では3年をかけて育てる取り組みが行われています。1年長く育てることで、魚体が大きくなり、身の質も変化します。鳴門海峡の速い潮を利用した養殖環境が、この長期育成を成立させている条件のひとつです。ふぐの旬は冬で、てっさ(刺身)、てっちり(鍋)、白子などが季節の楽しみとなります。
旬の見取り図
- 春 — 新玉ねぎ、桜鯛、しらす漁の解禁時期
- 夏 — 鱧、しらす、夏野菜
- 秋 — 貯蔵玉ねぎ、戻り魚、島の果実
- 冬 — 3年とらふぐ、寒鰆、貯蔵玉ねぎの甘み
同じ島でも、訪れる季節が違えば見えるものは変わります。島全体の背景は 淡路島の食文化、地域としての洲本は 洲本市、玉ねぎが串の上で生きる例は 焼き鳥 のページで扱っています。
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